ルームサービスのメニュー

案外気がつく人が少ないが、ホテルのルーム サービスのメニューはしらべて見ると大変面白い。
先達てヨーロッパを急いで廻って来た時、いくつかのホテルのこのようなメニューをいたゞ いて帰る機会があった。
先づロンドンのヒースロウ国際空港に近いS ・Sホテルではクリーム色と茶色のデザインの美しい卓上電話番号帳のような形のルームサー ビスメニューである。電話番号帳のデザインであるので、一番上に“ROOM SERVICE“その下には“DIAL 63 “(六三番へおかけ下さい)と入っている。
カバーを開けると、このホテルのコーヒールーム(ル・カフェ・ジャルダンとフランス名がついている) 、”ザ・パティオ”(中庭――ここにはカリブ海のあたりの庭がつくられ、大きな熱帯植物が植えてあって〝パティオ・バア” では南国風のカクテルが供される) 〝コロニィ・バアとレストラン” “ダイヤモンドリルのサ ロン”(こゝでは炭焼ステーキをいただきながら、美しいダンサーたちのショウをたのしめる)――の紹介がある。
見開きになった次の頁は、朝食のメニュー。”フルーツとジュース”の部では、普通のジュース類は一・三〇ポンド、フレッシュ・オレンジ・ジュースは三・一〇ポンド、グレープフルーツ半分は一・三〇ポンド、英国らしい色々のベリーのクリーム添えは三六〇ポンド、そしてフルーツサラダは一九〇ポンド。
コンチネンタル風朝食は、四・五〇ポンド で、好みのジュース、パン、飲物が含まれる。
オムレツは卵三個のプレーンオムレツでは四ポンド、ハム入りは四・七五ポンドとなる。 英国らしくスコッチ・キッパーは三・六〇ポンド。また六オンスのサーロインステーキものっていて、これは七ポンド。コーヒーや普通の紅茶は一・四〇ポンド。もしオレンジ・ペコやダージリンの紅茶であれば、一・五〇ポンドである。
このお値段には、税金とサービス料は入っている。尚ミニマム・チャージは二・五〇ポンド。深夜のミニマム・チャージは五・〇〇ポンドである。(一九八七年六月の一英ポンドは約二百四十円である)

ロンドンから約三百キロ車で走ると、イングランドを離れてウェールズに入る。
ここに昨年初夏開業したアメリカ系のH・I ・Cは外観はウェールズ地方の建物に合せてあるが、中は近代的なホテルである。
このホテルのルームサービスメニューはA四判の大型で、表紙は美しい。
表紙を開くと、第一頁の上にはグッド・モ ーニング・ブレークファースト”というタイトルが出て、「朝七時から十一時までの御朝食のルームサービスは午前三時までに、あなたのお 部屋のドアのノブに、御注文カード(御記入の上)を下げておいて下さい」、「午前三時以降の御注文はお電話で―」と書いてある。
次にあるのはホット・アンド・コールドスナックで、午前十一時から午後十時半までサービスされるもののメニューである。この中の印のついているものは深夜でも御注文に応じますと書いてある。この中で“ビーフとオニオン・スープ”は一・九五ポンド。
“スーパー・クリエーション”は本日のスープのこと、お値段も同じ、スープにはフレッシュ・ベークド・ロールつき。 “アボカド・マリー・ローズ”は、半分に切ったアボカドにシーフードをつめ、カクテルソースをかけたもの。
これをレタスの上に置き、レモンとトマトを添えている。”オムレツ・ディシジョン”は卵四個を使い、中味はチーズ、スモークドハムあるいはマッシュールを御指示下さいと書いてある。これにフレンチフライとサラダがつく。
このホテルのメニューには「お子供コーナー」ものっていて、これは便利である。一例をあげると、”四オンスのビーフバーガーとチップス”で、これは二・九五ポンド。”スパゲッティ・ウェスターン”は、一・九五ポンド。
アメリカ系のホテルらしく面白いのは、ホテルの部屋でテレビを見ていて、食堂へ出掛けるのがおっくうな人のための”テレビ・ディナー”と称するもの。サービスされるのは午後六時から十時までで、前菜はフレッシュなメロン か、フランス田舎風のパテ、八オンスのリブステーキ (炭焼)で、フレンチフライと季節の野菜添え。そしてデザートはアップルパイとクリーム、あるいはチーズとビスケット。これで一四・二五ポンドというお値段である。
ウェールズ産のチーズと他の各国のチーズの盛合せにセロリーとクラッカーを添えたものが、二・二〇ポンド。コーヒーはポットで一・ 二五ポンド。ダージーリンやアッサム紅茶も同じ価格である。
ワインの頁を見ると、シャンペンの方はモエ・エ・シャンドン”のボトルで二五・七五ポンド。”ボルドー”の白で九・五〇ポンド。
“ボルドー”の赤も同じ。スコッチウイスキー、ウォッカ、ジンなどがボトルで二七・五〇ポンドというところである。
これらの価格は税を含んでいるが、”チップはお気に召すまゝ――”と書いてある。

ドイツのハンブルグの”A” ホテルは名門ホテルのひとつであるが、このルームサービス メニューは小型だが、洒落たデザインである。 “Service d’Etage”とフランス語が入っている。
オードブルの部のトップは何と云っても、キャヴィア。五〇グラムにトーストとバターがついて、一一八マルク。海老のサラダは六一マルクである。
スープはフレンチ、オニオン・スープが一二マルク。コンソメも一ニマルク。 ポーチしたカレイにとかしたバターとパセリをふりかけたポテトつきで、四九・五〇マルク。平目のムニエルも四六マルク。フィレ肉のステーキにフレンチ・フライがついて四二マルク。仔牛のステーキも同じ値段。チキンのフリカッセはマッシュルームとライス添えで三ニマルク。シーズンのサラダは一ニマルク。当ホテル風のアイスクリームは一四マルク。
サンドウィッチの方は、二三マルクというところ。このホテルのルームサービスメニューは少なく、正午から夜十一時半までがサービスの時間。これらのお値段には税とサービス料は含まれている。(尚本年六月の一ドイツマルクは 約八十円である)

次はオランダの南部にある近代的な “C” ホテルの場合を見よう。
二つ折りの簡単なメニューであるが、ベルギーに近いので、アーデンナームの生に近いクン製のハムをメロンの上にのせたのが、美味しく、これが一九・五○ギルダー。クン製のサーモンとニシンの盛合せが二三・五〇ギルダー。 “本日のスープ”は五ギルダー。サーモンのフライは二七・五〇ギルダー。 フレッシュフルーツのサラダは七・五〇ギルダー。
白ワインは”シャブリィ”が六〇ギルダー。”ボルドー”の赤は四五ギルダー。
コーヒーはポットで四・五〇ギルダー、紅茶は二・一〇ギルダー。ウイスキーのミニアチュアービンは六ギルダーである。ビールは一杯が三ギルダー。
尚ルームサービスにはオーダーごとに六ギルダーのルームサービスチャージがつく。(尚本年六月の一ギルダーは約七十一円)
こうしてヨーロッパのいくつかの国々のホテルのルームサービスのメニューを見ると、色々と面白い発見ができる。 円貨への換算は電卓をたたいて見られたい。